エナメルは時間の経過による劣化で表面の透明なフィルムが黄色く変色していきます。白いエナメルであればレモンイエローになったように見えますが、下地の革に色がついている製品は色が重なって混ざった色に見えるようになります。
これはエナメルの劣化による変色なので、元に戻す事は不可能です。
依頼主さんは自分の保管が悪かったと思っているようですが、5年以上経過すればほとんどのエナメル製品はこのように変色が起き始めます。
色が濃いエナメルも同様に変色を始めますが、革の色が濃い色の為目立たたないだけです。

当社では表面の変色したフィルムの中に色素を埋め込み染色する事で、変色が目立たない状態にする事ができます。
色はどのような色でも可能ですが、濃い色にしなければ変色ムラが目立たなくなりません。(あくまでも元に戻すという方法ではなく、変色を目立たなくさせるという技法です)

特殊な光を当てて染料をフィルム内部に定着させますので、エナメルの光沢感や質感は一切変わりません。
今回は現行モデルの「グランブルー」色に染色させて頂きました。
エナメル部分のみの染色ですので、革のパーツは元色のままになります。

濃い色にすると今後変色や転写色移りなどが目立たなくなりますので、エナメル自体の傷みがそれほど酷くなく、色のトラブルだけ目立つような製品の場合はレーザー染色をお勧めしております。

「エナメルを剥がして再加工します」という業者さんが多くいますが、それは表面にエナメル塗装をしている状態で、表面がエナメルではなくなります。他社でトラブルになっているエナメル染色の相談が増えておりますのでご注意ください。
「染色」と「塗装」は原理が全く異なりますが、同じように使っている業者さんが多いので、必ず作業内容の確認をしてください。